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離婚届を出す前にやるべき準備リスト

「離婚届を出すだけで離婚が完了する」と思っている方は少なくありません。しかし、実際には届出前にやっておくべき手続きや準備が数多く存在します。これらをおろそかにしたまま離婚届を提出してしまうと、後から金銭トラブルや親権の問題、生活再建の壁に直面してしまう可能性もあります。


この記事では、協議離婚を前提とした上で、離婚届を提出する前に必ず確認・実行しておくべき項目をリスト形式で整理しました。特に財産分与や子どもに関する取り決めは、届け出の前にしっかり合意し、記録として残しておくことが非常に重要です。

1. 財産・負債の洗い出しと分配の合意

婚姻中に夫婦で築いた財産は「共有財産」として、原則として2分の1ずつに分けるルールがあります。預貯金、不動産、自動車、保険、年金、退職金などを含め、すべての資産を一覧にして共有することが出発点です。


また、マイナスの資産である借金やローンも含めて、どちらがどの債務を引き継ぐのかを明確にしておく必要があります。名義だけでなく、使途(生活費か個人の趣味か)も判断材料になるため、慎重に確認しましょう。


これらの取り決めは離婚協議書として書面化し、公正証書にしておくことで、後々の支払い遅延や争いを防ぐことができます。公証役場での手続きが必要ですが、弁護士のサポートを受けることで内容の妥当性も担保されます。


2. 子どもに関する取り決め(親権・面会交流)

未成年の子どもがいる場合、離婚届を提出するには親権者を決めなければなりません。話し合いがまとまらない場合は離婚届を受理してもらえないため、事前の協議が不可欠です。


親権だけでなく、養育費の金額・支払い方法・面会交流のルールも同時に取り決めておきましょう。「毎月いくら」「いつまで支払うのか」「面会は月に何回・どのように連絡を取るか」など、できる限り具体的に決めることが重要です。


これらも財産分与と同様に、書面で記録し、公正証書にしておくことが強く推奨されます。口約束では履行が不安定になり、子どもや親の生活に支障が出かねません。

3. 離婚後の姓・戸籍・住民票の手続き確認

婚姻の際に姓を変更した配偶者の方は、離婚により原則として元の姓(婚姻前の姓)に戻ります。婚姻中の姓を使用するためには、「離婚の際に称していた氏を称する届」などの別途手続きが必要です。この手続きをしないことで、特に仕事や子どもの学校関係で混乱が生じる可能性があります。


また、戸籍についても注意が必要です。婚姻中に夫(又は妻)の戸籍に入っていた妻(又は夫)が離婚すると、原則として妻(又は夫)だけが元の戸籍(実家の戸籍など)に戻る一方、子どもの戸籍は自動的には変更されません。そのため、離婚後に「母親(又は父親)と子どもの戸籍を同じにしたい」場合は、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立て」を行い、許可が下りた後に市区町村役場で「入籍届」を提出する必要があります。


住民票の住所変更も忘れずに行いましょう。離婚後に住所が変わる場合は、まず市区町村役場で転出届・転入届を提出し、それによりマイナンバーの住所も自動的に更新されます。併せて、健康保険証・年金手帳の氏名や住所の変更手続き、児童手当・ひとり親支援関連の届出など、生活の基盤を整えるための手続きが多岐にわたって必要になります。

4. 離婚後の生活設計と公的支援の確認

離婚後の生活を安定させるためには、収入の確保や居住環境の確保、子どもの保育や教育方針の整理などを事前に考えておく必要があります。特に専業主婦(夫)であった場合は、収入源や職探しの目処を立てておかないと、離婚後に経済的に行き詰まるリスクがあります。


一方で、母子家庭・父子家庭に対する支援制度や、ひとり親向けの住宅支援・就労支援制度も整備されています。自分が対象となる支援については、市区町村役場の窓口や福祉課などで事前に情報収集しておくと安心です。


また、健康保険の氏名・加入者情報変更手続き、年金分割の申請、税務上の扶養控除の見直しなど、必要な手続き項目を一覧化しておきましょう。何から手を付ければよいか分からない場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

離婚届はあくまで「法的に婚姻関係を終了させる手続き」にすぎず、その前段階での合意形成と書面化が非常に重要です。財産分与、親権、養育費など必要な取り決めを十分に準備したうえで届出に臨むことが、離婚後の生活を安心してスタートさせる鍵となります。また、離婚後の姓や戸籍、住まいを含む生活設計についても事前に十分検討し、必要な情報を収集しておくことが重要です。


「離婚届を出すだけ」と軽く考えるのではなく、一つ一つ丁寧に準備を進めることが、法的なトラブルを避ける最大の予防策です。EKAI法律事務所では、離婚協議書の作成やその他の手続きのアドバイスも含め、離婚前のご相談に幅広く対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

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