未払い養育費を確実に回収するための強制執行とは?弁護士が教える方法<給料の差押え>

養育費は子どもの生活や教育を支える重要な資金ですが、支払いが滞るケースも少なくありません。
このような場合、裁判所を通じて強制執行を申し立てることで、相手の財産を差し押さえ、未払い分や場合によってはこれから発生する分についても回収することが可能です。
ここでは、特に有効性の高い手段とされる「給料の差押え」についてわかりやすく解説します。
ここでは、特に有効性の高い手段とされる「給料の差押え」についてわかりやすく解説します。
給料の差押えとは?
給料の差押えとは、裁判所の判決や決定、あるいは公正証書や調停調書などの法的効力を持つ書面に基づき、相手の給料を差し押さえて養育費を回収する法的な手続きです。
この手続きを通じて、相手の勤務先から直接、毎月の給料の一部を差し押さえ、養育費に充てることができます。
この手続きを通じて、相手の勤務先から直接、毎月の給料の一部を差し押さえ、養育費に充てることができます。
給料差押えの流れ
以下で、具体的な流れを説明します。
給料の差押えには「債務名義」が必要です。債務名義とは、養育費の支払い義務が明記された正式な書類です。具体的には公証役場で作成する公正証書(執行認諾文言の記載があるもの)や家庭裁判所で行われる家事調停によって作成される調停調書、調停が成立しなかった場合に裁判所が判断を下す審判書などがあります。(債務名義については総論編で詳しくご紹介しています)。
債務名義を基に申立書を作成し、相手方の住所地を管轄する地方裁判所へ提出します。
申立書の記載事項は、以下のとおりです。
① 債権者(=養育費を受け取る側)、債務者(=養育費を支払う側)及び第三債務者(=債務者に給料を支給している勤務先の会社)の表示
② 債務名義の表示
③ 差し押さえるべき債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項
④ 債権の一部を差し押さえる場合にはその範囲
上記③の差し押さえるべき債権の特定が要求される理由は、差し押さえようとしている給料債権が、法律上差押えの禁止されている債権に当たるかどうかを裁判所が判断するため、また債務者や第三債務者が「どの範囲の給料が差し押さえられたか」を明確に把握できるようにするためです。
給料差押えは養育費を回収する有効な手段である一方、相手の財産権の制限を伴う非常に強力な手続きでもあるため、法的には厳格なルールが定められており、慎重な対応が求められるのです。
また、申立時には収入印紙代や郵便切手代などを裁判所に納める必要があります。
なお、この申立てにかかる費用の一部については差押えがうまくいけば回収することができます。
申立書の提出を受けた裁判所は、要件を満たしているかを職権で審理・判断し、適法(=給料を差押えて養育費の回収に充ててもよい)と認めた場合には債権差押命令を発することとなります。
裁判所が差押命令を発令すると、債務者(養育費を支払う側)と第三債務者(給料を支払っている勤務先)にそれぞれ命令が送達されます。
順番としては第三債務者への送達が先になります。これが完了すると差押命令の効力が発生し、会社は相手に対して弁済(=給料を支給)することができなくなることに加え、以下の事項を記載した陳述書を、命令を受け取った日から2週間以内に裁判所と債権者(養育費を受け取る側)に提出しなければなりません。
① 差押えに係る債権の存否(実際に相手に給料を支給しているか否か)
② 差押債権の種類及び額(給料や賞与の金額)
③ 弁済意思の有無
④ 弁済範囲または弁済しない理由
もし上記①から④について故意または過失によって陳述をしなかった,あるいは不実の陳述をしたような場合には,民事上の賠償責任が発生する可能性があります。
第三債務者への送達が完了したのち、債務者本人に対しても差押命令が送達されます。
そして、債務者への送達から1週間を経過すると、債権者は、債務者が勤務先から支給される給料から直接養育費を取り立てることができるようになります。
1.債務名義の準備
給料の差押えには「債務名義」が必要です。債務名義とは、養育費の支払い義務が明記された正式な書類です。具体的には公証役場で作成する公正証書(執行認諾文言の記載があるもの)や家庭裁判所で行われる家事調停によって作成される調停調書、調停が成立しなかった場合に裁判所が判断を下す審判書などがあります。(債務名義については総論編で詳しくご紹介しています)。
2.裁判所への申立て
債務名義を基に申立書を作成し、相手方の住所地を管轄する地方裁判所へ提出します。
申立書の記載事項は、以下のとおりです。
上記③の差し押さえるべき債権の特定が要求される理由は、差し押さえようとしている給料債権が、法律上差押えの禁止されている債権に当たるかどうかを裁判所が判断するため、また債務者や第三債務者が「どの範囲の給料が差し押さえられたか」を明確に把握できるようにするためです。
給料差押えは養育費を回収する有効な手段である一方、相手の財産権の制限を伴う非常に強力な手続きでもあるため、法的には厳格なルールが定められており、慎重な対応が求められるのです。
また、申立時には収入印紙代や郵便切手代などを裁判所に納める必要があります。
なお、この申立てにかかる費用の一部については差押えがうまくいけば回収することができます。
申立書の提出を受けた裁判所は、要件を満たしているかを職権で審理・判断し、適法(=給料を差押えて養育費の回収に充ててもよい)と認めた場合には債権差押命令を発することとなります。
3.差押命令の送達
裁判所が差押命令を発令すると、債務者(養育費を支払う側)と第三債務者(給料を支払っている勤務先)にそれぞれ命令が送達されます。
順番としては第三債務者への送達が先になります。これが完了すると差押命令の効力が発生し、会社は相手に対して弁済(=給料を支給)することができなくなることに加え、以下の事項を記載した陳述書を、命令を受け取った日から2週間以内に裁判所と債権者(養育費を受け取る側)に提出しなければなりません。
もし上記①から④について故意または過失によって陳述をしなかった,あるいは不実の陳述をしたような場合には,民事上の賠償責任が発生する可能性があります。
第三債務者への送達が完了したのち、債務者本人に対しても差押命令が送達されます。
そして、債務者への送達から1週間を経過すると、債権者は、債務者が勤務先から支給される給料から直接養育費を取り立てることができるようになります。
給料差押えのポイント
上記の流れにより、相手の給料から未払い養育費が確保され、回収が可能となるのですが、いくつかポイントがあります。
扶養義務の履行を確保することにより子どもの生活を守る要請から、養育費は法律上特別に保護されています。
そのため、給料差押えにおいては、通常の債権回収よりも広い範囲での差押えが認められており、給料(手取り額)の2分の1まで差し押さえることができます。さらに、給料だけではなく、ボーナス(賞与)や退職金も一定の範囲で差押えが可能です。
また、給料の差押えは未払いの養育費の分だけでなく、将来発生する分も対象とすることができるという点が大きな特徴です。そのため一度給料の差押命令が出されれば、原則として将来発生する毎月の養育費も自動的に差し押さえられることとなり、その都度申立てを繰り返す手間が省けます。
給料差押えの実行のためには相手方の勤務先を通じて給料債権から直接回収する仕組みのため、相手方の勤務先の情報が不可欠です。
勤務先の特定ができれば、毎月一定額を回収できる可能性が高く、他の財産を探して差押えるよりも効果的な手段となります。
しかし、離婚してから長期間が経過しているような場合もあり、勤務先が明らかでない場合も少なくありません。そのような場合には債務者を期日に裁判所に出頭させ財産状況を陳述させる「財産開示」の手続きや、市町村や日本年金機構などから勤務先情報を取得する制度である「第三者からの情報取得手続」を利用することが有効です。
また、せっかく差押えが成功しても、相手が嫌がってその会社から転職してしまうことがあります。この場合にはその勤務先を対象とした差押えの効力が失われてしまいますが、養育費の支払いが免除されるわけではありませんので、このような場合にも上記「財産開示」の手続きや「第三者からの情報取得手続」によって新たな職場を調査することが重要になります。
職場情報は給料差押えの成否に直結するものです。それゆえ、その取得には迅速かつ正確な対応が要求されます。
1.差押可能額
扶養義務の履行を確保することにより子どもの生活を守る要請から、養育費は法律上特別に保護されています。
そのため、給料差押えにおいては、通常の債権回収よりも広い範囲での差押えが認められており、給料(手取り額)の2分の1まで差し押さえることができます。さらに、給料だけではなく、ボーナス(賞与)や退職金も一定の範囲で差押えが可能です。
また、給料の差押えは未払いの養育費の分だけでなく、将来発生する分も対象とすることができるという点が大きな特徴です。そのため一度給料の差押命令が出されれば、原則として将来発生する毎月の養育費も自動的に差し押さえられることとなり、その都度申立てを繰り返す手間が省けます。
2.相手の職場情報が重要
給料差押えの実行のためには相手方の勤務先を通じて給料債権から直接回収する仕組みのため、相手方の勤務先の情報が不可欠です。
勤務先の特定ができれば、毎月一定額を回収できる可能性が高く、他の財産を探して差押えるよりも効果的な手段となります。
しかし、離婚してから長期間が経過しているような場合もあり、勤務先が明らかでない場合も少なくありません。そのような場合には債務者を期日に裁判所に出頭させ財産状況を陳述させる「財産開示」の手続きや、市町村や日本年金機構などから勤務先情報を取得する制度である「第三者からの情報取得手続」を利用することが有効です。
また、せっかく差押えが成功しても、相手が嫌がってその会社から転職してしまうことがあります。この場合にはその勤務先を対象とした差押えの効力が失われてしまいますが、養育費の支払いが免除されるわけではありませんので、このような場合にも上記「財産開示」の手続きや「第三者からの情報取得手続」によって新たな職場を調査することが重要になります。
職場情報は給料差押えの成否に直結するものです。それゆえ、その取得には迅速かつ正確な対応が要求されます。
給料差押えのまとめ
① 債務名義の準備が出発点
公正証書・調停調書・審判書など、養育費の支払い義務が明記された債務名義の取得が必要不可欠。
② 裁判所への正確な申立てが必要
申立書には債務者・第三債務者(勤務先)・差押債権の内容などを明記し、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に提出する必要がある。
③ 差押命令の送達で効力が発生
第三債務者(勤務先)への送達が完了した時点で差押えの効力が発生。勤務先は給料の支払いが制限され、裁判所および債権者に対する陳述書の提出が義務付けられる。
④ 手取り給料の2分の1まで差押え可能
養育費は法的に特別な保護対象とされており、通常の債権と比べて広範囲な差押えが認められている。給料に加え、賞与や退職金も差押え対象となる場合がある。
⑤ 将来の養育費も一括で回収可能
一度の差押命令により、未払い分のみならず、将来発生する毎月の養育費も継続的に差押えが可能。都度の申立ては不要。
⑥ 勤務先情報の把握が成否を左右
給料差押えは勤務先を通じて実行されるため、勤務先の特定は不可欠。勤務先が不明な場合は、財産開示手続や第三者からの情報取得制度の活用が有効。
⑦ 転職による差押えの効力喪失に注意
勤務先が変わると旧勤務先への差押命令は効力が失われるが、養育費の支払い義務は継続。新たな勤務先の調査と差押えが必要。
⑧ 法的要件を満たす正確な対応が不可欠
給料差押えは強力な法的手段である一方、相手の財産権を制限するため、厳格な法的ルールを遵守し、慎重かつ的確な手続きが求められる。
養育費を払ってもらえず、給料差押も検討されている場合には、弁護士に相談されることを強くお勧めします
給料差押えは、未払いの養育費を確実に回収するための非常に有効かつ強力な法的手段です。しかし、実際に実行するためには、債務名義の取得や裁判所への申立て、勤務先の特定、差押命令の送達・管理など、専門的な知識と正確な手続きが求められます。
ご自身で対応しようとすると、制度の複雑さや相手方の対応によって、思うように進められないケースも少なくありません。
弁護士にご相談いただければ、状況に応じた適切な対応方法をご提案し、手続きの代理や必要書類の作成も含めて一貫したサポートを受けることが可能です。
大切なお子さまの生活を守るためにも、まずは一人で抱え込まず、法律の専門家にご相談されることをおすすめいたします。
ご自身で対応しようとすると、制度の複雑さや相手方の対応によって、思うように進められないケースも少なくありません。
弁護士にご相談いただければ、状況に応じた適切な対応方法をご提案し、手続きの代理や必要書類の作成も含めて一貫したサポートを受けることが可能です。
大切なお子さまの生活を守るためにも、まずは一人で抱え込まず、法律の専門家にご相談されることをおすすめいたします。